1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。
この連載もいつの間にか18シーズン目に突入し、新たなショップでお届け。18シーズン目のラストを飾る第144回目は、代々木上原の「ドゥージョー(dojoe)」が2度目の2巡目! スタッフの小川さんには、どんなニュー・ヴィンテージを紹介いただけるのでしょうか!?
Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii
小川颯太 / dojoe スタッフ
Vol.144_モーションフォントTシャツ
ー早速ですが、今回ご紹介いただくニュー・ヴィテージとは?
すっかり季節は秋ですが、前回に引き続きTシャツでいきたいと思います。ネタは“モーションフォント”。要は“ブレ文字”ってやつです。
ーおっ! 〈シュプリーム(SUPREME)〉でも、そんなんありましたよね。あちらはアメリカの著名グラフィックデザイナー、ソール・バスが手掛けた、映画『グッドフェローズ』のタイトルシークエンスが元ネタだとか。
たしかに〈シュプリーム〉でも“モーションロゴ”としてリリースされていましたが、古着界隈でいうところのソレとは同じモーションでもまたちょっと違う感じで、数年前に〈バレンシアガ(BALENCIAGA)〉がサンプリングした元ネタといえば、ピンとくる方も多いかと。実際それがキッカケで火が点いて、ここ1〜2年で元ネタの市場価格も高騰化しています。
ーへぇ〜。モーションフォントというジャンルは昔からあったんですか?
巷でよく耳にするようになったのは本当にここ最近。ぼくは“ブレブレフォント”とか“酔っぱらいフォント”って呼んでいました。ということで、早速実物を見ていただきたいと思います。
モーションフォント“one tequila two tequila three tequila floor”のTシャツ ¥12,100(ドゥージョー)
モーションフォント“one tequila two tequila three tequila floor”のTシャツ ¥12,100(ドゥージョー)
ーこれは、どういうメッセージがデザインされているんでしょうか?
アメリカでは、よく知られている“one tequila two tequila three tequila floor”のフレーズがプリントされています。バーやパブで親しまれている「テキーラを3杯飲んだら、最後は床に倒れてしまう」という意味の定番ドランク・ジョークで、このようにメッセージの内容は基本的にアルコール絡み。そういう意味ではジョーク系になるのかな。
ーなんかプリントが…。
そう! 酔っぱらって視界がブレている様子をプリントで表現しているんです。なので、ブレという意味ではモーションかもしれませんが、〈シュプリーム〉のように格好いい感じではないっていう(笑)。今回は2枚用意しましたが、レイアウトもほぼ一緒だけれど製作者(社)は別…というか、慣用句のような定番ネタなので、「星の数ほど存在する内の2枚を用意した」というのが正しいでしょうか。
ー現代でいうところのネットミーム的なネタTシャツということですね。
ネット的表現でいうとコピー&ペーストされているはずなのに、個体ごとにちょっとした違いもあり、そこが面白さでもあります。この2枚でいうと、ホワイトボディの方は3杯目(three tequila)まで意識をある程度キープしていますが、ネイビーボディは2杯目(two tequila)ですでに視界がかなりブレ始めているっていう。さらにこちらなんかは、1杯目(one tequila)から終始ブレブレ(笑)。
モーションフォント“ONE TEEQUILA TWO TEEQUILA THREE TEEQUILA FLOOR”のTシャツ ¥9,900(ドゥージョー)
ーアルコール耐性にも個人差がありますもんね(笑)。続くこちらは、また違ったメッセージがデザインされています。
モーションフォント“have another beer”のTシャツ ¥11,000(ドゥージョー)
こっちは“have another beer”なのでニュアンス的には「ビールおかわり!」って感じですかね。すべての文字がブレブレなので、完全に飲み過ぎ(笑)。フェードしたボディの風合いも絶妙なヤレ具合で、このメッセージにまさにピッタリ。
ー最後の1枚はまた違うメッセージです。
モーションフォント“NOT OF THIS WORLD”のTシャツ ¥8,800(ドゥージョー)
フロントには“NOT OF THIS WORLD”。背中は巨きな満月をバックに空飛ぶ自転車。名作SF映画『E.T.』のパロディです。ちなみにフロントのメッセージは「この世のものとは思えないほど素晴らしい」という意味のスラング。
ーコピーライトも入っていますね。
“Mellow Mushroom Art 2002”と記されているので調べてみたところ、アメリカのピザレストランチェーン「メロウ・マッシュルーム(Mellow Mushroom)」のマーチャンダイズではないかなと。よく見ると、自転車の前カゴに乗っているキャラクターがピザを持っていますし、漕いでるキャラもなんとなくキノコっぽいシルエットじゃないですか?
ーたしかに!
ググってみると「1974年の創業初期から、店舗ごとに異なるサイケデリックでユニークなアートワークや壁画、オリジナルデザインを大切にしてきた」とのこと。となると、サイケ・ドラッグカルチャーの匂いがする企業系ですかね。アルコール以外でモーションフォントってあまりないので、かなり珍しいパターンだと思います。
ーそう聞くとブレというより、もう少しフワフワした酩酊感といいますか…。なんにせよ、シルクスクリーンプリントならではのユニークなアイテムですね。
ですね。シニカルなメッセージがアメリカっぽくてユニークですし、そのメッセージの意味とプリント表現がしっかりリンクしている点に惹かれて、今回紹介させてもらいました。どれも境界線をあえて曖昧にしたデータを作成し、ハーフトーン処理で細かいドット(網点)に変換して製版して刷っているのだと思うのですが、ドットの大きさ次第でブレの雰囲気も変わるので、そこに注目して探してみるのも面白いんじゃないでしょうか。
小川颯太 / dojoe スタッフ
アメリカで買い付けられてきたインポート&ユーズドアイテムのセンスの良さと先見性から、業界内にもファン多数の古着屋「dojoe」に、大学卒業後の23歳で入店し、現在はスタッフとして勤務。趣味はサウナ。
インスタグラム:@dojoe_tokyo

