そもそもニュー・ヴィンテージとは？
1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。
第29回目は、「シエスタ（SIESTA）」の青木 崇さん。
Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii
青木 崇 / SIESTA店主
Vol.29_エル・エル・ビーンのナイロンジャケット
―前回は〈エル・エル・ビーン（L.L.BEAN）〉のゴアテックスコートでしたが、今回はどんなニュー・ヴィンテージなアイテムをご紹介いただけるのでしょうか？
青木：実は今回も……。
―〈エル・エル・ビーン〉なんですね（笑）
青木：はい（笑）。今回はナイロンジャケットです。
エル・エル・ビーンのナイロンジャケット 各¥17,600〜¥19,800（ともにシエスタ）
―これって本当にナイロンなんですか？ 質感がちょっとコットンっぽいというか。
青木：そう思いますよね（笑）。ナイロン100%とタグにも記載されているんですが、触り心地がそうとは思えないくらいコットンっぽい。ぼくも手に取るたびに、「本当かなぁ？」って怪しんでいます（苦笑）。まぁ、逆にナイロンでゴアテックス搭載なのに、そうは見えないところがイイっていうのもありますが。デザインに関していえば、ポケットの形もちょっと珍しくて。大体フラップ付きのカーゴポケットの場合、サイドからの収納もあるんですが、それがフロントに配置されていて、しかもわざわざ玉縁仕様になっている点がユニーク。襟の高さやチンストの仕様も好みです。あとは肩から胸にかけての切り替えが、何の意味もなしていないっていう点も興味深く……。
―下まで縫い止められていないのは、通気のためのベンチレーションになっているとか？
青木：それが違うんですよ（笑）。バックパックを背負った時にショルダーストラップで擦れる箇所なので、補強的な意味合いとは言えなくもないけど、だったら下も縫い付ければいいじゃないかって。続いて内側も見てください。ドローコードが通っているウエスト部分には補強も兼ねたベルトが。格好いいですよね。ダイヤ型になった首裏の生地の取り方も同様。しかも裏地がレーヨン×ポリ素材だったり、気にし出すとちょいちょい妙な点が見つかる。でも、それが結果的に“らしさ”に繋がっているっていう。
―ちなみに、このモデルはよく出てくるんですか？
青木：それが全然見たことがないんですよね（笑）。ただ、それは希少価値があるとかではなく、単純に誰にも注目されていないって話なんだろうなと。結局、どんな用途も不明ですし。タグの生産国を見ると、中国製と香港製があるんですが、どうやら春夏用と秋冬用で別れていた模様。秋冬用は中綿にはシンサレートが入っていて、丈も長すぎず腰は隠れるから自転車乗りにも調子イイですしね。
青木：ぼくは〈リヴェンデル バイシクル ワークス（RIVENDELL BICYCLE WORKS）〉の自転車に乗っているんですが、そういうゆっくり乗るような自転車には、このノンビリした感じの服が似合いそうですよね。
―近年は〈エル・エル・ビーン〉の古着も認知度が増してきていると思いますが、青木さんはどこに惹かれるんでしょうか？
青木：雑誌のアウトドアウェア特集でも、絶対メインにはならず、“その他”でくくられちゃう感じとか。とにかく種類が膨大すぎて、まだまだ未見のモデルが見つかるという点も。いわゆる名作もイイですが、ぼくの場合は短命に終わってしまったモノにほど惹かれるんです。結局、10人中1人、2人しか“イイね!”と言わないモノの方が楽しい。生産国だって、中国製でもイイんです。「もしアメリカ製だったらちょっと嬉しい」くらいのスタンスで探すと、面白いモノが見つかりますよ、きっと。
青木崇 / SIESTA 店主
渋谷・神南エリアの人気古着屋「I&I」を経て、インポート＆古着、自転車のパーツなども取り扱うショップ「シエスタ（SIESTA）」を、原宿・とんちゃん通りにオープン。アメリカ西海岸周辺のカルチャーの匂いを感じさせるセレクトで、スケーターや自転車乗り、シティボーイから業界関係者まで幅広くファンを獲得。昨年めでたく10周年を迎え、11年目となる今年9月に世田谷区桜新町に移転し、リニューアルオープン！
公式HP：store.siesta81.com
インスタグラム：@siestastore
