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蔡俊行フイナム発行人ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

代官山通信

蔡俊行
フイナム発行人

ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

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紙の出版の未来

2011.09.28

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 いくつかの出版社から定期的に雑誌が会社に届く。出版に関わっているものもあれば、そうでないものもある。届かなくて必要な雑誌は、毎号購入する。つまり必要最低限の雑誌は常に手元にある。

 どの雑誌もパラパラめくって興味を持てば特集を読むが、最近はほとんど熱心に読める特集はない。なのでもっぱら連載ものやコラム、ブックレビューや映画レビューのような情報ページを読むことが多い。

 雑誌はオフィスのいつも同じ場所にあるのだが、読もうと思って探しても見当たらない雑誌も結構ある。スタッフがそれぞれ自分のデスクに持って行って読んでいるから、定位置に不在なのだ。読んだから戻せと常に言っているのだけど、これはなかなか治らない悪癖のようなもんだ。

 その行方不明雑誌の最たるものが「ブルータス」だ。特集が毎号興味をひくのか、スタッフ間では人気がある。反対に不人気なのが赤文字系の雑誌たち。男性が多い職場ということもひとつの理由なんだろうけど。

 雑誌の売上はご承知の通りあまり良くない。理由はもうここで述べるまでもない。皆さんご承知のとおり。でも一言で言わせてもらうとしたら、みんな雑誌を読む時間が足らなくなったということだと思う。人が一日活動できる時間は平等に24時間。仮に7時間寝るとして、残りは17時間。ここに生活を営むに不可欠な行為、例えば食事、入浴などを除き、さらに就業、あるいは学業時間を差っ引けば大体の自由時間が計算できる。さらに部屋の掃除や洗濯、整頓なども不可欠。残った僅かな時間のシェアをテレビ番組やラジオ、映画、漫画、雑誌、新聞、小説、あるいはゲーム、パソコン、ネット、趣味といったものが取り合っている構図だ。昔はテレビがほとんどのシェアを握っていたが、いまでは老人しかお茶の間にいない。

 情報やお楽しみが限りなく無料に近い状態で手に入れられる現在、お金を出して、あるいは出かけて行ってその情報を手に入れようと思う人は少数派になってしまった。しかし無料コンテンツといえどもソースは、ほぼ出版や放送が担っている。つまり誰もがそうしたコンテンツ製作者に対価を払わなくなったらそうした大本のソースも作れなくなる。そんな世の中がじきにきそうである。

 政治のニュースにしても、芸能のニュースにしても発表するメディアが無くなると一体誰が取材に行くのだろう。対価をもらえない取材者がわざわざ忙しいのに好き好んで取材するとは思えない。

 だから雑誌や新聞、テレビなどは必ず残る。形は変わるかもしれないが、記者がいなくなることはまずない。もしいなくなったとすれば、この国は無法状態になる。たぶんそんな国には誰も住みたくない。

 この記事を読んでそんなことを思った。

 

 

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