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蔡俊行フイナム発行人ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

代官山通信

蔡俊行
フイナム発行人

ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

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景気のいい話

2012.07.05

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 ぼくが小さい頃、親戚が新居を建てた。昭和40年代の話である。どういうわけかいまでも記憶に残っているのはその時に掛かった費用である。ぼくはわりと大人たちが話していることをそばで無言で聞いている子供だったようで、親や大人もそんなことは気にせず、子供の前でなんでも遠慮なく喋っていた。どこそこの誰々が男と逃げたとか、誰々は借金で逃げたとかなぜかエスケープ話が多かったけど、大人たちのダークサイドな話を好奇心を全開にしてすました顔で聞いていた。

 その新居の価格であるが、土地2000万の建屋2000万円だった。地方都市ということと時代を考慮していただければ分かると思うが、それなりの豪邸である。他にも親の知人が同時期にもう少し郊外のあたりに家を建てたのだが、こちらは土地建物込みで2000万円であった。おぼろげな記憶だが。

 以来、ぼくのなかでは家の単位は2000万ということになっている。上京し、バブルを経験し数億の家やマンションに呼ばれたり見たりする中でも三つ子の魂は強固に心の奥底に静かに横たわっており、ローカルクオリティの5倍だとか10倍だとか彼我を比べひとり悦に入っているのであった。

 中学になるとスーパーカーブームがやってくる。池沢さとしの「サーキットの狼」というマンガから火がついたブームだが、出てくるクルマの評価軸は最高速とその価格であった。確かそのころフェラーリやランボルギーニが300km/h超で価格が2000万円、ポルシェ他が最高速280km/hあたりで1000万円ちょい。確かそんな記憶。つまり300km/hは家一軒と捉えていた。子供心に家を買える金額のクルマを持つ人というのはどんな種類の人なのだろうという方向にむしろ興味を持った。

 家が買えるくらいの金額のクルマを買うなんて想像すらできなかったが、いまはそうでもない。大人になり、それなりに成功している人などの出会ったり、交際する機会も増えた。昔でいうスーパーカーに乗っている人もそこらにゴロゴロいる。アパレルで当てたとか、飲食店を手広くやっているとか、いわゆるIT系とかそんな人たちである。

 そんなワンロット(2000万)を軽く転がせることのできる成功者でもなかなか転がせない物件のニュースを聞いて驚いた。

 オーストラリアの著名ワインブランドのペンフォールドが16万8000ドルのワインを限定発売したらしい。世界で12本のみの販売。日本円にするとおよそ1350万円らしいが、アラブの殿様ならともかく、いまの日本で280km/hクラスのロットを一晩で空けられる数奇者がいるのかどうか。

 これ80年代の後半だったら間違いなく、日本に6本くらいは輸入されていただろうね。

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