小径逍遥、再び。
青野賢一
ビームス クリエイティブディレクター / ビームス レコーズ ディレクター
「ビームス創造研究所」所属。選曲・DJ業、執筆業。音楽、ファッション、文学、映画、アートを繋ぐ。
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No.4 紫陽花
2009.07.06
ヴェネツィア・ビエンナーレの会場の様子を写真で見た。
各国のパビリオンには、その国を代表する、
あるいは推奨するアーティストの作品が並び、
また、その空間自体も様々な趣向が凝らされている。
どこの国のパビリオンだか失念してしまったが、
建物の近くに咲いていた紫陽花がやけに印象深い。
我が不勉強から、紫陽花なるものは
日本の花だと思い込んでいた。
調べてみると、強ち間違いではないようだが、
西洋紫陽花のように、
日本の紫陽花(ガクアジサイ)が
ヨーロッパへと伝わり、
品種改良を経て再び日本に入ってきているものもあるようだ。
よく見かける、手鞠のような形状のものは西洋紫陽花で、
あれの殆どは装飾花というもので成り立っている。
花びらに見えるものは「萼」。
一般的な花びらを指す「花冠」を支えるものが萼であって
この紫陽花などは、いわばフェイクの花びらなのである。
紫陽花は、またその葉に毒性を持っているそうだ。
誤って食すと、目眩や嘔吐などの症状を示すそうだから
注意が必要である。
泉鏡花『紫陽花』は、時間が止まったような
水無月の暑いひと時を切り取った小品だが、
その情景描写を読むにつけ、
軽い目眩に襲われるような錯覚に陥る。
これも紫陽花の作用だろうか。
今年の梅雨明けは
少しだけ早そうだ。
青野さんの絵心披露!待ちです(笑)