HOME  >  BLOG

Shop / Brand Blog

青野賢一ビームス クリエイティブディレクター / ビームス レコーズ ディレクター「ビームス創造研究所」所属。選曲・DJ業、執筆業。音楽、ファッション、文学、映画、アートを繋ぐ。www.beams.co.jpshop.beams.co.jp/shop/records/blog.beams.co.jp/beams_records/

小径逍遥、再び。

青野賢一
ビームス クリエイティブディレクター / ビームス レコーズ ディレクター

「ビームス創造研究所」所属。選曲・DJ業、執筆業。音楽、ファッション、文学、映画、アートを繋ぐ。
www.beams.co.jp
shop.beams.co.jp/shop/records/
blog.beams.co.jp/beams_records/

Blog Menu

No.5 ポケット

2009.07.21

このエントリーをはてなブックマークに追加

テーラードのスーツやジャケットに付いているポケットは
殆ど使うことがない。
パッチポケットのものは例外だが、
それ以外のものは、胸のポケットを除いては
しつけ糸で閉じられたまま。

理由は簡単で、サイドポケットに物を入れると
シルエットが崩れてしまうからだ。
生地にもよるが、しつけ糸で口を閉じていた方が
だれる感じがなくて尚よい。


パンツのポケットはしつけ糸こそ外すけれど、
入れるものといえばせいぜいハンカチ位なものだ。

これもシルエットが気になるからに他ならない。


普段、何も入れないものだから、
何らかの理由でポケットを使わねばならない時は、
何とも言えない異物感がつきまとう。

ポケットという言葉を辞書で調べてみると
「資力」「財力」なんていう意味もあって、面白い。

"be in pocket"で、お金がある、とか得をする。
"be out of pocket"で、お金がない、とか損をする、
というような使い方だ。


ポケットを閉じている者は
入ってもこなければ
出て行きもしないということではあるが、
自ら開けることが出来るという点では、
資本主義との接点を辛うじて持っている。


そういう視点で見るならば、
聖職者の着衣にポケットがあるかないか、
あるのならばいつからあるのか、
ということは非常に興味深い話題ではないだろうか。

ところで、グリム童話『ヘンゼルとグレーテル』で
ヘンゼルはポケットいっぱいに詰めた小石を道しるべにして、
捨て去られた森から帰宅する。
魔女に捕らえられた後、
魔女をパン焼き竃に押し込んで
生き延びることが出来たこの幼い兄妹は、
ポケットいっぱいの宝石類を携えて再び帰宅する。

ポケットの持つ「(鉱物の)一時的な貯蔵庫」
という意味を考えると、非常に良く出来た話だと思う。

※コメントは承認されるまで公開されません。