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青野賢一ビームス クリエイティブディレクター / ビームス レコーズ ディレクター「ビームス創造研究所」所属。選曲・DJ業、執筆業。音楽、ファッション、文学、映画、アートを繋ぐ。www.beams.co.jpshop.beams.co.jp/shop/records/blog.beams.co.jp/beams_records/

小径逍遥、再び。

青野賢一
ビームス クリエイティブディレクター / ビームス レコーズ ディレクター

「ビームス創造研究所」所属。選曲・DJ業、執筆業。音楽、ファッション、文学、映画、アートを繋ぐ。
www.beams.co.jp
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No.6 眼の色

2009.08.05

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「カラーコンタクトですか?」

そう訊かれて驚いた。
その彼女は、私の眼の色がグレイだと言うのだ。

自慢にもならないが、私は視力がめっぽうよくて、
この方コンタクトのお世話になったことがないので、
彼女がグレイだと言ったのは、私の素の眼の色である。

言われると気になるもので、
鏡を覗き込むと、なるほどグレイだ。
こうして自分の虹彩をまじまじと眺めることなど
なかなかないことなのだから、少し不思議な心持ちがした。

背徳的かつ涜神的な世界が繰り広げられる
オーシュ卿『眼球譚』は、
眼球をはじめ様々な球体のイメージが繰り返し登場する。
ここでの眼球は、生とは切り離された「もの」としての眼球だ。


ホルスト・ヤンセンの画集『フュリス』での
少女フュリスと夢魔との行為も、
その生々しい描写とは裏腹に、
フュリスの眼はまるで生気を欠いている。

ヤンセンは「エロスの中に死があり、死の中にエロスがある」と言い、
その両者の果てなき闘争こそが「愛のメカニズム」だと説く。
少女と夢魔の行為は、機械的なメカニズムに収束し、
そこに生の入り込む余地はないのである。
そして、常にエロスとタナトスは背中合わせに寄り添っている。

鏡の中に映る自分の眼を凝視すると、
そこには合わせ鏡のごとく、
幾重にも像を結んだ自分の姿がある。

その様子は非常にシステマチックかつ整然としたもので、
うっかりずっと見てしまうが、
あまり見つめていると
アリスのように
向こう側の世界へ行ってしまうので
注意が必要だ。

090804.jpg

(挿絵:mafuyu

Comment: 1

相変わらず素敵な文章です。
僕の目の色は黒に近い茶色です。
もっと頻繁にブログアップしてください。

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