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青野賢一ビームス クリエイティブディレクター / ビームス レコーズ ディレクター「ビームス創造研究所」所属。選曲・DJ業、執筆業。音楽、ファッション、文学、映画、アートを繋ぐ。www.beams.co.jpshop.beams.co.jp/shop/records/blog.beams.co.jp/beams_records/

小径逍遥、再び。

青野賢一
ビームス クリエイティブディレクター / ビームス レコーズ ディレクター

「ビームス創造研究所」所属。選曲・DJ業、執筆業。音楽、ファッション、文学、映画、アートを繋ぐ。
www.beams.co.jp
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No.7 晩夏

2009.09.01

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夏の終わりに好んで読んだ本といえば、
小泉八雲『怪談』と
上田秋成『雨月物語』だ。

どちらも、いわゆる怪異譚で、
どちらかというと真夏に相応しい作品だが、
私は好んで晩夏に手に取った。

『怪談』は、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が
日本の古い説話や民話、口承文学を
丁寧に取材し、編纂したものだ。
「耳なし芳一のはなし」「むじな」「雪女」など、
非常にポピュラーな話が詰まった一冊は、
日本的な情緒に溢れた、
美しい作品集といえるだろう。


一方の『雨月物語』は、
中国の白話小説(いわゆる口語小説)を下敷きにし、
日本的な情緒を加えたものである。
こちらは「浅茅が宿」「吉備津の釜」「蛇性の婬」などが
有名なところだ。

江戸時代の天明文化期に書かれたものだけに、
ハーンのものよりは古めかしく、
しかしそれがより幻想的なムードを醸し出している。
タイトルである『雨月』も、
雨が止み、朧月が出ている時に編成したので
『雨月物語』とする、と秋成が序文で書いている通り、
何かが起こりそうな雰囲気を感じさせるものだ。

この『雨月物語』の「浅茅が宿」「蛇性の婬」を
日本が世界に誇る映画監督・溝口健二が映像化して、
1952年ヴェネツィア国際映画祭「国際賞」を受賞したのは
よく知られるところである。
溝口版『雨月物語』は、彼の美しい世界観が
作品の幻想的なイメージをさらに押し広げている傑作なのだ。


最近の怪異譚は、
どうも生々しい話が多くて辟易してしまうが、
これらの作品のように、自分のイメージの中の
恐怖、幻想、怪奇というものを増幅させてくれるものは、
何度でも繰り返し読みたくなるものである。

自分で想像力を働かせること、
イメージの世界に遊ぶことなしには、
新鮮なものの見方は養われないだろう。
見開くべきは心の眼、といったところであろうか。

台風が小康状態の夏の終わりに、
そんなことを思う。

Comments: 2

溝口版 雨月物語は何度もトライしているのですがどうしても最後まで観切れません。根性が足りないのでしょうか。
ラフカディオは片目が不自由で横顔からのスナップしか撮らせなかったそうです。
早く次ぎのブログアップしてください。

BoogieNightsさん
コメントありがとうございます。
早めの更新に努めます!

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