小径逍遥、再び。
青野賢一
ビームス クリエイティブディレクター / ビームス レコーズ ディレクター
「ビームス創造研究所」所属。選曲・DJ業、執筆業。音楽、ファッション、文学、映画、アートを繋ぐ。
www.beams.co.jp
shop.beams.co.jp/shop/records/
blog.beams.co.jp/beams_records/
No.8 贋物の冬
2009.09.19
週の殆どを原宿で過ごすので、
昼食も当たり前に原宿が多い。
大体決まった5、6軒の店の中から気分で選ぶのだが、
その中の、とある眺めのいいカフェレストランに行った時のことである。
基本的に昼食はひとりでとることが多いので、
この日もひとり、事務所から歩いてその店に向かった。
窓側にはカウンター席が設けられており、
わたしはそこへ案内され、注文する。
食事が運ばれてくるまでの時間は
外の景色を眺めて過ごすのが楽しい。
よく晴れたその日は、綺麗な青空であった。
窓枠、建物の外壁、
そして道路を隔てた向こう側に建っているマンションが
空を切り取り、わたしのいる場所からは三角形の空しか見えない。
その三角形の空には、雲ひとつなく、
澄んだ青色で、それはあたかも冬の空を思わせるようだった。
ここでわたしは、
よく晴れた冬の昼間を夢想した。
寒がりのわたしは、きっとコートにマフラーをしっかり巻いて
グローヴもつけているに違いない。
鼻を赤くし、早足でこの店に辿り着く。
貴重な冬の日差しと暖房装置のおかげで暖かい店内に身を置けば
しばしの後に強ばった身体が解きほぐされていくのがわかる。
寒さはあまり好まないが、
こうした瞬間は
他の季節では決して味わうことのできない
至福の時だ。
そんな時に聞こえてきて欲しい音楽はなんだろう、
とさらに夢想を続ける。
サティもいいし、
最近お気に入りのThe Horses Haも合う。
Hauschkaのプリペアードピアノも素敵だ。
と、そんなことを考えていたら、
煙草の煙のようにすぅっと雲が流れてきた。
澄んだ青色の三角形の空は
たちまち冬らしさを失い、
晩夏から初秋を感じさせるものとなっていった。
目線を空から下げていって、
道行く人に目をやると、
薄着で歩いている人ばかり。
そうか、9月だったと
改めて気づいた頃に、
注文した料理が運ばれてきた。
今回も素敵な文章です。
でも音楽の章は当方にはちんぷんかんぷんです。
もう少しボクにも解るナンバーを紹介してくださいませ。
ちなみにそのカフェはどこなのでしょう?
BoogieNightsさん
コメントありがとうございます。
音楽ネタ。そうですね。もうちょっとポピュラーなものにも
折りをみて触れたいと思います。