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青野賢一ビームス クリエイティブディレクター / ビームス レコーズ ディレクター「ビームス創造研究所」所属。選曲・DJ業、執筆業。音楽、ファッション、文学、映画、アートを繋ぐ。www.beams.co.jpshop.beams.co.jp/shop/records/blog.beams.co.jp/beams_records/

小径逍遥、再び。

青野賢一
ビームス クリエイティブディレクター / ビームス レコーズ ディレクター

「ビームス創造研究所」所属。選曲・DJ業、執筆業。音楽、ファッション、文学、映画、アートを繋ぐ。
www.beams.co.jp
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No.21 移動するダンス

2010.11.01

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「珍しいキノコ舞踊団」20周年記念公演
「20分後の自分と。」を観てきた。

3331 Arts Chiyodaの屋上が会場となっており、
観客は1Fから階段を上ってそこに辿り着く。

旧練成中学校をリノベーションしている3331であるから、
屋上へ出るドアも小さなものなのだが、
その小さな扉の先には、
ひな壇状に組まれた客席と舞台装置があり、
いきなり非日常空間に投げ出される感じだった。

この日が千秋楽でありまた、
前日の台風の影響もあって、
客席は満員御礼。
そんな中、定刻から少しだけ遅れて
開演となった。

ちょっとノスタルジックなジャズや
エキゾティックサウンドとともに
複数名で踊るパートから始まったこの公演。
激しいながらもしなやかな動きは勿論、
音楽の構造を完璧なまでに再構築する
その身体表現の細やかさに、まず圧倒される。
リズム、旋律、和音、独奏が、
身体に宿る、とでも言えばいいだろうか。
ダンスが音楽を奏でているようだった。


最初のパートの後は、
ソロのパフォーマンス。
初めは舞台中央でひとり踊っていたが、
途中で客席の前(つまり舞台でないところ)でも
まったく別のソロパフォーマンスが始まる。

この辺りから、音響と時間軸の
絶妙な捻れが感じられるようになる。
Bill Withers「Just the two of us」を
3人で踊るパフォーマンスでは、
同じ曲をワンコーラスずつずらして流し
(各人の足下のスピーカーからそれぞれ流れる)、
観客は一度に同じダンスを時間差で観ることになる。

一度に3人のダンスを観ると、
既に最初のひとりのダンスを
観ているはずなのに、
まだ観ていないような、不思議な感覚に襲われた。

その後、後半に突入するところで、
観客は全員席を立たねばならなかった。
演じる場所が変わるというのだ。

みんな荷物片手にぞろぞろと
今まで舞台だったところに移動し、
シルエットだけのダンスを観始めたと思ったら、
客席だったところでも別のパフォーマンスが始まる。
そちらに移動しようとすると
また別の場所でダンスが始まる、
というように、屋上という空間で
同時多発的にダンスが行われた。

ダンスを追いかけ、
観客が移動するという
何とも賑やかな時を経て、
最後は出演者、観客入り交じってのダンスで、
祝祭ムードは最高潮となり、終演。
踊る楽しさを観客にも味わってもらうなんて、
とても粋な計らいであり、また、この舞踊団の
根底に流れるフィロソフィーのようなものを
感じさせるものでもあった。
20周年という節目の公演のフィナーレには
最高にフィットしたものであったのではないだろうか。

踊るという行為は
非常にプリミティヴな行為であり、
そこには人間の感情がギュッと凝縮されている。
そういう意味においては
とてもポジティヴなムードに満たされた
楽しい公演であった。
そしてまた、身体表現の面白さを
実感するのに十分な時間でもあった。

11月27日、28日に
那須で開催される「SPECTACLE in the Farm」でも
彼女たちのパフォーマンスを観ることが出来るので、
もし興味のある方は是非。
http://www.spectacleinthefarm.com/

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