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で、NEW VINTAGEってなんなのさ? スピンオフ  “ニュー・ヴィンテージ”視点で語るシュプリームの魅力。
What Is NEW VINTAGE?

で、NEW VINTAGEってなんなのさ? スピンオフ
“ニュー・ヴィンテージ”視点で語るシュプリームの魅力。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。この古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ってもらう連載「で、NEW VINTAGEってなんなのさ?」の今回はスピンオフ回です。テーマは、いまやストリートの絶対王者となった〈シュプリーム(SUPREME)〉。各店がニュー・ヴィンテージとして残っていくであろうアイテムを紹介し、その見所や楽しみ方を好き勝手に話してもらった1万字オーバーの大放談。少々長いのですが、最後までお付き合いください!

Selector 3_SIESTA 青木 崇

デザインはダッフルコートだけど、アイテム名はなぜかM-65!?

ー 急にアカデミックな考察が始まったことで、オジさんチームに対するハードルが一気に上がりました(笑)

青木: やだなぁ…(笑)。とりあえず持ってきたのを出しちゃいます。ダッフルコートとレザーのコーチジャケットです。

ー ちなみに、それぞれいつ頃のモデルなんですか?

青木: う〜ん、そこは知らない。「ブルールーム」の2人に訊いて!

羽月: (即答で)1998年と2001年ですね。

一同: オ〜!(拍手)

青木: じゃあ、記事内ではぼくが答えたことにしておくということで(笑)。まずはこのダッフルコートなんだけど、〈シュプリーム〉って、ずっとM-65をつくり続けていることでも知られていて、これもアイテム名は「M-65 TGL PARKA」。正直、生地感に何となく近いノリを感じるものの、デザインに関しては「どこがだよ!」っていうくらい別物です(笑)。果たしてこれが、M-65から派生して誕生したのか、はたまたダッフルコートに無理やりM-65的雰囲気をくっつけたのか、真相は不明。とはいえウールメルトンのダッフルなんかよりも軽く羽織れるし、生産が〈スピワック(SPIEWAK)〉でアメリカ製っていうのが、古着的にもイイなぁって。

伊藤: 〈シュプリーム〉がちゃんとブランドとして服づくりをしはじめた時代っすよね。

青木: この当時は M-65自体も〈スピワック〉が OEMで生産していたし、格好いいんです。チンストラップやエポーレットなど、スケーターにとっては余計なディテールを無くしたりしていて、すると本家〈スピワック〉からまったく同じデザインのものが翌年にリリースされるっていうね(笑)。そのアメリカらしいラフな感じもイイ。ちなみにシェルはコットン/ナイロンのハーフ&ハーフ。中綿が入っているので結構暖かいんですよね。

ー これは継続的にリリースされたモデルなんですか?

青木: う〜ん……。

坂本: じゃあ、「ブルールーム」に訊いてみましょうよ!

羽月: 多分、1回だけじゃないですかね。

一同: へ〜(感心)

青木: …確か1シーズンだけだったね(ドヤァ)

ー いま知ったばかりの情報をドヤ顔で(苦笑)

青木: カラーはこのネイビー以外に、アイボリーとオリーブの3色展開。ロゴが入っているとかでもなく、あってもピスネームのみっていうシンプルさ。まぁ、そのくらいかな。要は「なんか格好いいじゃん」っていうね。

坂本: でも、これを着ていたら服好きは反応しますよ。「それどこの?」って。

青木: そうそう。その時にピスネームを指差して、さりげなくアピールするみたいな。オリーブとネイビーは同色だけど、アイボリーはブラウンっていうのも芸が細かくて。

伊藤: そこは覚えているんですね。

青木: これに関しては、いっぱい売ったんで覚えているだけ(笑)

ー 結構見つかるんですか?

青木: いや〜もう、ほとんど出てこないし、今後もつくらないんじゃないかなぁ。いまだったら背中にアーチロゴとか入れちゃうだろうし。そういうのも全然格好いいんだけど、自分がこの年齢になって、それを着るかっていったら話は別だなって。

ー ニュー・ヴィンテージとして考えるならば、その視点は重要ですもんね。

さすがニューヨーカーというべきか、スケーターなんだけど大人なコーチジャケット。

青木: 次に紹介するのは2001年にリリースされたスエード素材のコーチジャケットです。アイテムの見どころとしては…(視線をブルールームの2人に向けつつ)。

坂本: また他力本願じゃん!(笑)

一同: (爆笑)

青木: でもね、ホラ見て。紙タグでしょ?

ー ということは…?

青木: そうそう、そういうことですよ(笑)。スエードでコーチジャケットをつくっちゃうという発想自体が、さすがニューヨーカーというべきか、スケーターなんだけど大人だよね。さっきも言ったけど、オーセンティックなアイテムに対するイジり方が抜群に上手い! ちなみに着心地に関して言えば、重いしフォルムも悪いの二重苦(笑)。袖先にリブがないので、ストンとしたシルエットになるため、ちゃんとジャストで着ないと格好悪いっていう。でもその不便さというのがアメリカっぽくて愛らしいというか。

伊藤: 他のブランドが〈ショット(SCHOTT)〉とのコラボでつくったりしちゃうところを、あの当時にインラインでつくるというのがすごいスよね。

坂本: サンプリングっていう手法だったり、ストリートブランドの服づくりにおける礎になっているとも言えますよね。

青木: そうそう。新しいデザインを生み出さなくても、格好いいモノは自分たちでつくれるっていう。そこにスケーターマインドが感じられるのが〈シュプリーム〉なんじゃないかなって。

坂本: イイなぁ〜、まさにヒップホップですね。

青木: えっ!? なんて?

伊藤: だから、ヒップホップだなって。

青木: そうそう、ヒップホップなんですよ。

一同: (爆笑)

ー 〈シュプリーム〉は、古着をサンプリングしたアイテムも多いですもんね。伊藤さんが以前手掛けていた古着屋「T」にも、〈シュプリーム〉のデザインチームがよくサンプルを買いに来ていたとか。

伊藤: そうスね。そもそも彼らも古着ばかり着ていますからね。みんなお洒落だけど、たとえすれ違っても〈シュプリーム〉のデザイナーなんて、普通は分からないと思いますよ。

青木: つくっている連中がそもそもお洒落。だからぼくらが若い頃って、〈シュプリーム〉は格好いい大人たちが着ているブランドだったので、それに対する憧れはいまもある。

伊藤: (ブルールームの2人をチラチラ見つつ)これ、定価はかなり高そうですよね。

青木: (ブルールームの2人をチラチラ見つつ)定価かぁ…いくらかなぁ…?

ー 面倒くさいオジさんたちだなぁ(苦笑)

羽月: 2001年の『ブーン』に新作として載っていたので、年代は覚えていたんですが定価まではちょっと…。でも、ぼくはこれを見た瞬間、〈グッドイナフ〉を思い出しました。あそこも91〜92年にスエードのコーチジャケットをつくっていたんですよね。

青木: あったあった!

羽月: その後の1999年に〈シュプリーム〉ともコラボしていたりと関係性は深いので、もしかしたらそこからサンプリングした可能性もあるのかなって。

伊藤: それはあり得るね〜。

青木: ……最後にオイシイところを全部持ってかれたわ!(笑)

一同: (爆笑)

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