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で、NEW VINTAGEってなんなのさ? スピンオフ  “ニュー・ヴィンテージ”視点で語るシュプリームの魅力。
What Is NEW VINTAGE?

で、NEW VINTAGEってなんなのさ? スピンオフ
“ニュー・ヴィンテージ”視点で語るシュプリームの魅力。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。この古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ってもらう連載「で、NEW VINTAGEってなんなのさ?」の今回はスピンオフ回です。テーマは、いまやストリートの絶対王者となった〈シュプリーム(SUPREME)〉。各店がニュー・ヴィンテージとして残っていくであろうアイテムを紹介し、その見所や楽しみ方を好き勝手に話してもらった1万字オーバーの大放談。少々長いのですが、最後までお付き合いください!

Selector 4_伊藤商店 伊藤忠宏

生産数はわずか100枚!? ゴンズが着用していた、あのG-8。

ー では最後は、伊藤さんお願いします!

伊藤: みんなのプレゼンが良すぎて、自信が失くなってきちゃったなぁ…(汗)。気を取り直して、まずはG-8から。

一同: オ〜!

伊藤: マーク・ゴンザレスが着用していたことでも知られるジャケットの色違い。これのリリースは95〜96年ですかね。手に入れたのは10年ほど前ですが、当時はまだオールドの〈シュプリーム〉がまだそんなに価値が付いてなかった時代で、ぼくは関係者に土下座して8,000円で譲ってもらいました(笑)

坂本: マジすか? いまじゃ10倍で取引きされていますよ。数年前にちょっと流行って、ベースとなった〈スピワック〉のG-8も値上がりしたくらいで。

伊藤: まだ日本に代理店が無かった時代なので、市場に出ている数も非常に少なく、一説には100枚もないとか。しかもゴンズが着ていたブラックに比べて、このオリーブは珍しいんじゃないですかね。

ー ベースモデルとはどう違うんでしたっけ?

青木: 裾のリブを取っちゃって、着丈を長くし、フロントポケットもやや低めに配置、さらにサイドポケットにサブポケットがあるのが特徴かな。これが〈スピワック〉版だとさらに中綿も入っていて保温性が高いっていう。でも、中綿が入ってないからこそ、あのゴンズが着ていた写真のようなシルエットが生まれるっていうね。

坂本: ね! あのゆるい感じが最高なんだよな〜。

伊藤: 初期はスタジャンも裾リブなしのタイプがあったし、たしかに着ていて調子はイイんですよ。ただ、保温性が見込めないので、アウターの割には「いつ着ればイイの?」ってくらい、着用のタイミングが難しくもあって(笑)。スケーターが羽織るのには丁度イイんでしょうね、動くと汗かくし。これだけは手放せないです!

坂本: G-8が売れるっていう現象を起こせるっていうこと自体、すごい影響力ですよね、先ほども話に出たように、古着からサンプリングしていることが多いので、古着屋的には「次はこれがくる!」っていう指標にもなっていますよね。

葛西: いや、格好いいですよね!

羽月: 若い世代のほとんどが、〈エス・エス・ズィー(SSZ)〉がゴンズジャケットとしてサンプリングしてつくったアップデートバージョンを見て、このG-8という存在を知ったんじゃないですかね。ぼくらの周りでもみんなゴンズよろしく、インナーにスウェットを合わせて着ていました。

最多で100個は持っていた、好き過ぎるキャンプキャップ。

ー で、もうひとつが定番アイテムであるキャンプキャップ。

伊藤: 気球柄はそんなに古くなくて、2009年にリリースされたやつですね。その頃って、日本で〈シュプリーム〉の人気が下火になっていた時期なんですよね。

坂本: たしかに! これ知らないですもん。

伊藤: このキャンプキャップというアイテムが好きすぎて、最多で100個は持っていましたからね。そんなぼくが選んだファイバリットが、現在は〈ノア(NOAH)〉を手掛けているレンドン・バベンジンが、クリエイティブディレクターを務めていたこの時代のもの。さっきも言ったように日本で〈シュプリーム〉の人気がなかったので、どのアイテムも生産数自体がメチャクチャ少ないんですよ。なので2007年〜2010年くらいの〈シュプリーム〉は、本国でもイーベイでは相当高値で取引きされています。

一同: へ〜。

伊藤: このキャップなんかも500ドルとかで取引きされているんじゃないですかね。モチーフが気球で、元ネタは〈ポロ・ラルフ・ローレン(POLO RALPH LAUREN)〉。たまたま千駄ヶ谷を歩いていたら、ママチャリに乗って横を通り過ぎた女性が、これのネイビーを被っていて。思わず走って追っかけて、土下座して譲ってもらおうと思ったんですが、さすがにヤメときました(笑)

坂本: この人、土下座に躊躇しないなぁ(笑)

伊藤: 話を戻しますが、このキャンプキャップもすごく面白くって、2000年代中盤くらいから急に被りが深めのシルエットになるんですよ。(ブルールームの2人を見ながら)その理由って知ってる?

羽月・葛西: いえ、知らないっす。

伊藤: よっしゃ! 挽回のチャンスきた! 店舗も増えてきて日本における市場の方が本国よりも拡大化したことで、日本人に合わせて被りを深くローカライズさせたんですよね。元々は欧米人に合わせているので被りが浅く、バイザー部分も若干カーブしていたんですが、被りを深くバイザーもストレートに変更して。

ー そんな低迷期を経て、いつ頃からストリートのメインストリームに復権したんでしたっけ?

伊藤: 2011年くらいから、ラッパーのタイラー・ザ・クリエイターが着用したことで人気が復活していきます。なのでまさに谷間の時期ではありますが、だからこそ隠れた名作も多く、かなりアツイっすね。

ー 青木さん、いかがですか?

青木: イイですね。

坂本: っていうか、シルエットが変わっていたとか気付かなかったっす。

坂本: バイザー部分も、近年のはまた若干カーブしてきてますよね。

伊藤: そうなんすよね。あと今回一応、同じキャンプキャップで3型持ってきているんですが…。

ー せっかくなので、そちらもぜひ!

伊藤: まずは、ラメルジーとのコラボ。昨年復刻もされていますが、これは2002年リリースの1st。当時はバックパックなんかもありましたが、それがまた定価がメチャ高くって! ラメルジーがスプレーを吹いた生地を使ってつくっていたので、全部デザインが違うんですよ。で、グレーのエレファント柄は2002年ですかね。ちょうど〈ナイキ(NIKE)〉とコラボして、名作「DUNK LOW PRO SB SUPREME」をリリースしたのと同じタイミングで。他のストリートブランドからも、同じくエレファント柄をサンプリングしたアイテムが結構出ていましたよね、この頃。もう出せば売れる! みたいな感じでどこもかしこも(笑)。ネイビーのエレファント柄も同時期だと思います。

坂本: エレファント柄が「AIR JORDAN3」からサンプリングされたモチーフという文脈を考えると、ぼくらよりも上の世代と「ブルールーム」のような若い世代を繋ぐキーワードとも言えますよね。そういう視点で見るとまた、ニューヴィンテージとして価値のあるモノだなって感じられるなぁ。

ー ちなみに〈シュプリーム〉も人気ブランドの運命ということで、ブートが沢山出回っていますが、本物とブートって確実に見分けられるものなんですか?

伊藤: キャンプキャップでいえば、タグの位置やアジャスターの形状など見分けるポイントは結構ありますよ。最近だとネットで調べれば、ブートの見分け方を解説しているブログがヒットしたりしますし。中でもブラックウォッチ柄なんかは、ブートが大量に出回っていたイメージがあります。

羽月: それに沢山見ていると、なんとなく見分けられるようになってきますよね。

坂本: へ〜。そもそもコラボアイテムのように、高値で売買されているからこそブートがつくられるわけですもんね。その点、ぼくらがピックアップしたようなインラインの何でもないアイテムは、ブートに引っかかる可能性は少ないっていうのはあるかも。

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