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で、NEW VINTAGEってなんなのさ? スピンオフ  “ニュー・ヴィンテージ”視点で語るシュプリームの魅力。
What Is NEW VINTAGE?

で、NEW VINTAGEってなんなのさ? スピンオフ
“ニュー・ヴィンテージ”視点で語るシュプリームの魅力。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。この古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ってもらう連載「で、NEW VINTAGEってなんなのさ?」の今回はスピンオフ回です。テーマは、いまやストリートの絶対王者となった〈シュプリーム(SUPREME)〉。各店がニュー・ヴィンテージとして残っていくであろうアイテムを紹介し、その見所や楽しみ方を好き勝手に話してもらった1万字オーバーの大放談。少々長いのですが、最後までお付き合いください!

Selector 2_blue room 葛西智裕&羽月基

ネットや雑誌のバックナンバーを見て情報収集!

ー 続いては「ブルールーム(blue romm)」の羽月くん&葛西くん。同じくジップフーディーですね。

羽月: パッと見は地味なんですけど、個人的にはすごく好きなアイテムです。〈シュプリーム〉ってロゴのサンプリングをよくするじゃないですか。有名なところだと〈パタゴニア(PATAGONIA)〉とか。これは〈カーハート(CARHARTT)〉のコーヌコピアが頭文字の“S”になっているんですよね。同じロゴが付いたものでは、デザインがまんま一緒な「トラディショナルジャケット」型やキャップ、パンツもあったりします。一時期はカラバリで3色揃えていたくらいメチャメチャ好きなアイテムです。

ー サーマル裏地が、かなり保温性高そうな。

羽月: メチャクチャ暖かいですよ。ちなみに皆さん、これがいつリリースされたかって覚えていたりしますか?

青木: う〜ん、分かんないなぁ。

伊藤: たしか200…9年くらいだったような!?

羽月: …実はコレ、2002年なんです。

伊藤: えっ、2002年!?

坂本: なに知らないフリして、先輩を引っ掛けてんだよ!(笑)

一同: (爆笑)

羽月: ちょっと意地悪な質問しちゃいました(笑)。伊藤さん、申し訳ないです! 海外のファンサイトでも1998年か2002年かって論争になっているんですが、ディテールをかんがみるに後者じゃないかなと。2004年までは品質タグが薄い紙製で、それがオールドの証明になっています。その後、同じ紙製でも厚めになって、そこからツルツルしたものになり、国内販売分ではワングラムの表記がされるようになったりと変遷していくワケです。

一同: へ〜(感心)

青木: それはどのアイテムでも?

羽月: 大抵そうですね。あと、窪塚洋介さんのことがメチャクチャ好きで…。

青木: 俺も好きだね!

伊藤: 同じく。

羽月: マジすか。じゃあ、皆さんの方が…。

一同: いやいや(笑)

羽月: で、そんな窪塚さんがこのフーディーを着用している写真をネットや雑誌で2枚ほど発見したんです。それが両方とも坊主頭で。となると時期的には、映画『狂気の桜』の公開前後ということで2002年と特定できまして…。

一同: オ〜!(驚き)

羽月: さらにライフカードのCMでも着用しているんですよ、コレを。

青木: “で!? っていう”で有名なアレね。

羽月: そう、ソレです! 〈サキャスティック(SARCASTIC)〉のビーニーに合わせているんですけど、電車のホームのシーンで、カメラが下から煽る時にロゴがチラって映るんですよ。で、「コレだっ!」って(笑)

青木: でも2人ともリアルタイムじゃないよね? ネットで見つけるの?

羽月: YouTubeです。CMの映像では色味がブラックなのかネイビーなのか分かりづらいので、何度も一時停止と再生を繰り返したりして確認した結果、色はブラックなんじゃないかなって。

伊藤: ワハハハ、ディグるなぁ〜(笑)

坂本: ってことは、今日から“で!? っていう”フーディーだ!

羽月: ぼくらの場合、皆さんと違って色々とリアルタイムでは体験できていない分、こうやってネットや雑誌のバックナンバーから情報を得るしかないんです。でも、そこには当時の空気感も一緒にパッケージされているので、調べるほどに新たな発見があって。

ー 映像や雑誌からアプローチするというのも古着の探し方の定番ですが、年代判別にYouTubeが使われるようになるとは、これも時代ですね。

坂本: デジタル・ネイティブ世代ならではのディグの仕方ですよね、完全に。

羽月: 〈カーハート〉をサンプリングしている点はもちろんポイントではありますが、そうやって誰々がCMで着用していたなどの時代の空気感を感じさせ、さらにそれによって変わるタグなど語り所は沢山。ちなみに90年代だとボディに使われている〈バセットウォーカー(BASSETT WALKER)〉のタグが付いたものも出てきたりします。これは〈サブウェア(SUBWARE)〉や〈ステューシー(STUSSY)〉も一緒。どうやら90年代のスケートブランドの多くで使われていたようですね。さらに初期〈グッドイナフ(GOODENOUGH)〉なんかは〈リー(LEE)〉のボディを使っているんですが、それもタグをひっくり返すと〈バセットウォーカー〉の表記があるので、多分〈リー〉のOEM生産をしていたんでしょうね。それで、そのブランクボディをストリートブランドたちが使っていたと。

ショーンフォントのタグが付いた、同じ年のカーゴパンツ。

羽月: それでいうとこのパンツなんかも面白いんじゃないですかね。最初期の96年製でぼくらと同い年なんですが…。

伊藤: 96年生まれ! タメかぁ…。

羽月: 最大の特徴が、ボックスロゴのタグと一緒に付いた、通称“ショーンフォント”の品質タグ。レジスターナンバー(毛織物と毛皮の対象となる製品をアメリカで製造や輸入、販売を行う事業者に対して発行される識別番号)も〈ステューシー〉と一緒でしたし、同じ工場でつくられたのは間違いないんですが、遊びでつくったのかOEMだったのか真相は定かではないんですよね。とはいえ、創業者のジェームス・ジャビアは元々、〈ステューシー〉出身なのでショーン・ステューシーのサポートのもとでスタートさせたと考えるならば、こういうアイテムが初期に存在するのも当然な話っていうか。

伊藤: ショーンフォントのTシャツなんかもあったしね。この辺りだとまだ日本の代理店がなくって、「ストーミー」などで買い付けてきたアイテムが売られていた頃っすね。で、その後に「メイドインワールド(MADE IN WORLD)」なんかでも取り扱われるようになって。で、〈ヘクティク(HECTIC)〉が日本代理店になってから、スケーター以外にもその名が知られるように。

羽月: ですね。ぼくらと同世代の間では「〈シュプリーム〉は格好いいけど〈ステューシー〉は…」なんて思う人もいたりしますが、元を辿れば大元は一緒。フーディーもパンツもパッと見は地味なので若い子には響きづらいかもしれませんが、両者の繋がりを示す歴史的資料として、この機会にみんなにも知ってもらいたいと思ってセレクトしました。

ー ストリート考古学的にも重要な発見であると。青木さん、いかがですか?

青木: いやぁ〜イイと思いますね。タグを見て生産背景まで読み取るってなると、もう完全にヴィンテージの感覚だし、歴史を語るという視点も、ぼくらの世代にはなかったので面白いなって。

坂本: ぼくらは、そういう捉え方がなかったので驚きですよ。

伊藤: それに時代的にも、シュプリームだからって大事に着る感覚ではなかったので、多分もう出てこないと思うんですよ。初期のアイテムって。スケーターがみんなボロボロになるまで着古して捨てちゃっていると思うし。

羽月: 実際、このショーンフォントのタグの付いたパンツだって、ぼくもこれ以外にショーツ1型しか持ってないですし、仰る通り見つけてもみんな裾がボロボロ。

青木: 正しく“スケーターのための服”だった時代のね。

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