着た瞬間にたしかにわかる、モノのよさ。

ー シャツは全部で5タイプありますね。こちらもやはり、それぞれに違う生地が用いられていたりするのでしょうか?
平沢:3つは、ラグジュアリーブランドが使用する高級生地の試験反や残反を、生地問屋の社長さんから譲っていただきつくったものです。そのうちブルーのチェックとブラウンのストライプは、トーマスメイソンのものですね。
ー ディテールの特徴やこだわりは?
平沢:特徴的なのは、レディース並みの小さな襟と、細カンヌキで留めたポケット。とくにポケットにはすごくこだわりました。たっぷりと入る容量はありますが、カンヌキでビシッと留めているので、ぱっと見はポケットが付いていることに気づかないくらい品があります。

ー 先ほどのデニムパンツもそうですが、ことさらに主張しないディテールからは、さりげない迫力のようなものが漂いますね。
髙橋:ほんとだ、手をつっこんでも変に膨らんだり、シャツのシルエットが崩れたりしないですね。
平沢:前たての裏にシングルステッチで縫いこんで留めることで実現したデザインです。このシャツの縫製をお願いしたのは、40年間シャツひと筋でやっている工場さん。前たてを見てください。生地の柄に沿って針を落としてくれているので、ちょっと離れるとステッチが見えなくなりますよね。指示書で頼んでいないにも関わらず、そうした細かいところまでプライドを持って仕立ててくださいました。裾の縫製も、3センチの間に22回針が落ちる22針で仕立ててあって……。
髙橋:俺、そこまでマニアックなことわかんないっすよ!(笑)
一同:(笑)

髙橋:ただ、説明されると難しいけど、着た瞬間にたしかにかっこよさがわかるよね。ふだん自分がシャツを着るときには、基本的にボタンは全部閉めたいんですが、これは全部開けて背中を抜いて着るのも案外いいかもしれない。なんというか、単にシャツを一枚着ている感じがしないですよね。
平沢:ジャケット見えするというか。夏に冷房の効いている場所では羽織って、それ以外はポケットに物を入れて持ち運ぶくらいの、「着るカバン」のように考えてもらってもいいかもしれません。