古着のよさをわかっていながら、対極の服づくりをしている感じ。

ー 最後はワッフル地のクルーネックですね。サーマルともスエットともつかない、両者のいいとこ取りをしたようなアイテムでしょうか?
平沢:シーズンテーマのリファレンスにした時代に、セーターが不足していたためにサーマルという防寒着が生まれました。安くて保温性があるということで、非常に重宝されたそうです。それを、スエットみたいにゆったりと着てもらえるようにしたのがこの商品。ワッフル生地は薄くて伸びやすいので、度詰めして限界まで肉厚にすることでそれを防いでいます。
髙橋:たしかに、ウールのツイードのようなずっしりとした重みを感じますね。
平沢:また、これくらい硬いと今度は洗濯で縮みやすくなるところを、これは18双のBD糸を使って目付を895gにして……。
髙橋:またわかんないハナシに(笑)
平沢:すみません(笑) つまり、これ以上縮めないというくらいギュンギュンに密度を高めているんです。あと、洗ったときに表情が崩れないような生地に仕上げています。スエットより綺麗めに振りたいときにサーマルを手に取ると思うので、いつまでもきれいに着られるように。

髙橋:リブの詰まり具合もそうだし、平沢くんの性格が端々から垣間見えますね(笑) それでいて古着が好きっていうのがおもしろいよね。古着って、適当でラフで、終わりかけのよさみたいのがあるじゃないですか。それをわかっていながらに、対局のものづくりをしている感じがする。いまいくつなの?
平沢:今年24歳になります。
髙橋:若っ!! その年齢にしてここまで洋服のことを考えて、こだわってものづくりをしているのは本当にすごいことですよ。
平沢:ありがとうございます。常日頃から、セレクトショップのオリジナルブランドだからといって、いっさいの妥協はしたくないと考えています。新しく洋服をつくる以上は、10年後にも捨てられない洋服をつくりたいですし。
髙橋:サスティナブルって言葉がもてはやされてるけど、たしかに“捨てられない服”っていうのが、そもそも服としての本懐ですよね。
平沢:本当にそう思います。「エコだから着る」っていうのは、愛じゃないと思う。それよりも、「好きだから着つづけたい」と思ってもらいたい。そして、そこにクオリティーで応えるのがぼくたち洋服屋だと思うんです。

髙橋:アツいな~~!(笑) 昔、ロンドンの〈ギミーファイブ(GIMME FIVE)〉っていうブランドのTシャツに、“I DON’T WANNA BE A FASHION VICTIM”ってプリントされてるのがあったんですけど、俺はずっと洋服に生かされてきたから、むしろ「I WANNA BE……」なんですよ。で、もう平沢くんは完全にファッションヴィクティムだよね(笑) そのまま徹底的にやったほうがいいと思いますよ。
平沢:自分のやってきたことに対してラムダさんからそんな言葉をいただけて、なんだかホッとしました。本日は、本当にありがとうございました!
