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Vol.2 井原知一×内坂庸夫 トレイルランニングにまつわる往古来今。
MONTHLY JOURNAL Nov. 2021
Let’s Trail Running The Mountain Together!!

Vol.2 井原知一×内坂庸夫 トレイルランニングにまつわる往古来今。

インディペンデントな国産メーカーが数多く生まれ、若手アスリートの台頭、はたまたフィットネス女子の参入など、着実に人口を伸ばしてきたトレイルランニング。コンペディティブな競技として、山のアクティビティの1つとして、はたまたただの遊びとして、トレイルランニングは今後どのように発展を遂げるべきなのか。黎明期からシーンを見守ってきた編集者の内坂庸夫さんと、日本を代表するトレイルランナー・井原知一さんの対談から探る、トレイルランニングの過去・現在・未来。

自然と人に迷惑かけないで責任取れればね、何やってもいい。

井原:ローカル化ってことでいうとトレイルランニングショップも増えていて、グループやチームが増えていますね。そこで初心者への指導もできていて良いコミュニティになっていると思います。

ー 井原さんもチームで指導していますよね。

井原:ぼくは所属している〈アンサー4〉のチーム「LIVING DEAD AID RUNNING CLUB」でコーチをしています。TOMO’S PITでは個人指導のオンラインコーチングをしています。

ー 大会の運営もされてますね。

井原:そもそも大きなレースをやりたいとは思っていなくて、変わったことに興味があるんです。例えば、ぼくが運営しているBackyard Ultra Last SAMURAI Standing(バックヤードウルトラ)も、今年は5都道府県で同時開催するんですけど、これが47都道府県で同時開催したら面白いなって。小規模なところで走れるので、運営もしやすいですし、毎回1時間ごとに帰ってくるんで、定点カメラを47個置いて、ライブ見たらすごく面白いんじゃないかな。それで47都道府県の優勝者が、また全国大会で集まって、県を代表して戦う。そこで勝った人が、アメリカのBackyard Ultraに行って、他の国々の選手たちと戦うっていう構造をつくりたい。最初は一個人の戦いなんですけど、県で優勝した方を全国大会で応援しよう。全国大会で勝った人は、この人がアメリカに行って他の国に負けないように応援しようっていうのをぼくは見たいんです。

内坂:国の代表。すごいね。

ー ご自身のチャレンジではなにか面白いことを考えてますか?

井原:T.D.T.100はレースではなくイベントとしてやっていて、ぼくの初100マイルが自分でつくったT.D.T.100だったので、ぼくが100回目に100マイルを走るときはT.D.T.100を走りたい。それも100人で一緒に走りたいんですね。そうすると、ぼくは100回目の100マイルを完走するんですけど、当日に100人で100マイルを走ると、ぼくが20年くらいかけてやってきたことを1日で終わらせちゃうんですね。それも同じ日に見たみたい。1人ひとりに100マイルを走り終わった後の疲労感ってあるじゃないですか。それを100回やることの疲労感ってどういうことかというのも感じて欲しいし、こんな楽しいことを20年間やってきたんだって見方でも楽しいと思うし、このT.D.T.100がそもそもレースではなくて勝手につくり上げたものから始まっているんだというヒッピー的な部分も感じて欲しいですね。

ー なるほど、楽しそうですね。

井原:もうひとつは生前走の大会を開催したいです。死ぬ前にお葬式をやるのって生前葬ですよね。それにかけて、死ぬ前に走るランニング大会で、65歳以上の人であれば誰でも参加できますけど、でも年齢に応じて制限時間があって、誰が一番長く走れるかを競います。

内坂:自分の年齢だけ、時間がもらえる? バックヤード的な?

井原:そうですね。例えば90歳だったら90時間、でも65歳だったら65時間。どっちが長い距離を進めるかっていうのをやってみたい。

内坂:ぼくは結構、時間もらえるよ(笑)

井原:例えば、ハセツネCUPの参加者の年齢の推移を見ていても、60歳とか70歳以上で完走する人ってどんどん増えているので、もう10年したらそういった大会があってもいいんじゃないかな。

内坂:歴史を積み重ねるごとにトレイルランナーの年齢層も広がっていて、結婚して夫婦になって子供が産まれてというのもごく当たり前になっている。上田瑠偉さんの子供が親に手を引かれてトレイルランデビューしているからね。当然上は高齢化していくけど、生前走なら関門でタイムアウトにならないのでいいと思うな。トレイルランニングの世界がものすごく広がっている感じがするね。山の暴走族だのなんだのって言われて散々叩かれて、まあ今でも叩かれてはいるんだけど、夫婦や親子でやるとなると、ものすごく柔らかい感じになるじゃない。もっとももっと広がるべきだし、そういう大会があっていいなって思う。

井原:今はファッションも、大会も、楽しみ方も、選択肢がいっぱいあると思うんですよね。

内坂:山と人に迷惑をかけなければ、そして責任を持つことができるのであれば、何をやってもいい。それが本来のトレイルランニングじゃないのかなって思う。

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