「この服はすごい」っていうのを伝えたい。
ー前置きがかなり長くなりましたが、ここからが本題です(笑)。今回はふたりが一緒にものづくりをした、というか、金子さんがアレンジを加えた形になるんですかね。

金子: アレンジというか、途中で作業をやめてくださいっていう(笑)。それで加工なしのアイテムをつくったんです。〈バウワウ〉の加工を実際に着込んでやろうとしたら、途方もない作業になるじゃないですか。それを身を以て知るためのアイテムですね。自分自身、デッドストックや新品のアイテムを育てたいっていう世代なので。インラインはアフターで、今回のアイテムはビフォーなんです。これがあることによってインラインのすごさも伝わるし、いろんなメッセージが届きやすくなるんじゃないかと思って。
ーとはいえ、それはすごくリスキーなことでもあると思うんです。加工は〈バウワウ〉の特徴であって、それを引き算するということは、ブランドの魅力を消しかねないですよね。

左が〈バウワウ〉のインラインで展開される加工モノで、右が金子さん別注のリジッドモデル。

金子: 加工には加工に合う生地があるんですよ。何が言いたいかというと、ヴィンテージの生地をゴシゴシと加工しても、きれいにはならないんです。それを知ったうえで権守さんに「加工なしでいきたいんですけど、大丈夫ですか?」って聞いたんです。すると、「全然大丈夫です」っていう答えが返ってきて。加工の服を未加工にしたらチープになっちゃう服って結構たくさんあると思うんですけど、〈バウワウ〉はやっぱりちがいましたね。
ー権守さんにも、未加工のままで大丈夫だという自負があったわけですね。

同じく加工モノと未加工モノ。こうして比べてみると、改めて加工のクオリティの高さに気づくと同時に、元の素材の良さも際立つ。

権守: 全然大丈夫ですね。さっき話したように、生地やパターンですでに愛嬌をだしているんで。たとえばネルシャツは17ハーフくらいのデカいサイズ感でつくってるんですよ。
金子: 当時にはないサイズでつくっているということですよね。
権守: これは金子さんと違う感覚かもしれないですけど、自分はかっこいいパターンでかっこいい服をつくろうとしていた時期があって。でも、それをやっているとなんだか飽きるんですよ。単純にかっこいいパターンは好みじゃない。やっぱり愛嬌のあるパターンがいいなと思って。
金子: なんだろう。その愛嬌のポイントってやっぱり気になっちゃいますよね。
権守: 本当にひとそれぞれだと思うので、一概には言えないんですけど。
金子: サンプルを見て、すごくテンションが上がりました。どれもいいアイテムなんですよね。
ースエットパンツがありますが、未加工ということは、裾も切りっぱなしじゃなくなるんですか?
権守: 切りっぱなしですね、そこが愛嬌なんで(笑)。
金子: (笑)。
ーアイテムの選定はどのように行ったんですか?


金子: ぼくが選ばせてもらいました。基準としては、とにかく加工がやばいやつ。一見すると繋がりがないようなラインナップになっているんですが、ぼくが原型を見たい、そしてそこから着て育ててみたいって思うものをセレクトしました。ヘリンボーンのミリタリーの生地でおもしろいアイテムとかもあったんですけど、それは古着とかでも原型が見れるじゃないですか。なので、ややマイナーなものをセレクトしていますね。
権守: そのアイデアを聞いたときに、やばいって思いました。シンプルにおもしろいなって。アイデアが的を得ているというか。
金子: 単純にぼくが権守さんの服を着て育てたいだけなんですけどね(笑)。あとは「この服はすごい」っていうのを伝えたい。いろんな気持ちが含まれてますね。
ー先ほど価格の話がありましたが、加工の工賃がないぶん、さらに値段が安くなるということですよね。
金子: めちゃくちゃ安いですよ。もう笑っちゃうくらいです(笑)。
