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別離
2012.05.01
今年のアカデミー賞の外国語映画賞受賞した「別離」を観た。イランの映画である。
イランってアメリカと面倒を起こしている国というイメージだが、こんな映画を観ると現代社会というものは、信条や思想の違いは少しあっても、みんな同じような生活をしているのだなとあらためて思う。つまり特定のイメージで捉えられている中東の国々も、市民はぼくらのような普通の人々であって、狂信的で急進的な思想を持っている集団ではないということだ。彼らの感じる喜びや苦悩など、我々とまったく同じである。
映画にしても小説にしても、それを観たり読んだりする時、つまり年齢や経験したことによって受け止め方の分量が大きく影響する。失恋した後、結婚した後、大切な人を亡くした後、子供が生まれた後、物事の見方って加齢と経験で少しずつ変わってくるものである。
そういう意味で、この映画は個人的にかなり響いた。
離婚の調停から物語は始まるが、理由は客観的に見てどちらが悪いとか良いとは決めかねる。その後の物語でも、小さなウソはあっても登場する人物に悪人はいない。それでもボタンの掛け違いというか、ちょっとしたズレから事件は展開し、それぞれに悲しい思いをさせるのである。こういうことってどこにでもある自分や家族の物語である。たいしたことないけど、導かれる結果は個人にとっては大きなこと。
背景に経験な宗教心があって成り立つエピソードが重要な役割を担うという意味で、信仰心の篤い人々が暮らす国での映画である。アカデミー賞受賞もむべなるかなだ。
ところでそのアカデミーを贈ったアメリカが、その国と戦争をはじめるかどうか緊張関係が続いている。戦争が始まれば、劇中に出てくるような市民やその家族、友人たちに犠牲者が出る。そういう意味でイランの人たちもアメリカに住む人達とまったく違わないということを分からせるという理由で、全アメリカの成人にこの映画を観させたい。
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