工場の発想力と技術によって、クリエイティブは支えられている。
続いて金子さんが向かったのは、石川県能美市。ここには世界的な合成繊維の染色加工メーカーである「小松マテーレ」があります。
QUILTED DOWN JACKET ¥66,000
「ヴィンテージのダウンジャケットをリファレンスにつくった一着なのですが、クラシックなフォルムなので、生地や色目でモダンな表情に仕上げるためにこの生地を選びました。ソリッドな光沢感と、都会の景色になじむ色は、この工場でしか表現できないものなんです」。
染色の工程では、反単位(1反:約50m近く)の膨大な量の生地を均一に染める必要があります。そのプロセスでは、届いた生地を染色しやすくするための整備からはじまり、実際の染色・加工、仕上、そして最後の品質検査に至るまで、たくさんのステップが踏まれ、それぞれに職人たちの技術と知見が注がれているのです。
下準備を経て染まりやすい状態になった生地は、こちらで染められる。生地をロープ状につなぎ、130~135℃の高温で染色。ムラが出ないような技術がこの窯のなかに詰まっている。
各工程で専門的な技術を持ったスタッフたちが設備を扱う。機械も日によって誤差が出るため、仕様に合わせて、それをきちんとコントロールしている。
染色された生地はセンサーを使用しながら目視でクオリティをチェック。基準に及ばない箇所には印をつける。
「生地をつくることもそうですが、染色の過程においても、やっぱり安定のクオリティを生み出すことが大事なんですよね。大量生産されるものだからこそ、一定のクオリティを担保することがいかに大変かということを、この現場は教えてくれますね」。
ナイロン特有の質感をキープしたまま染色を行う設備は、ここにしかない。生産量も限られるため、生地の希少性も高まる。
こちらはQUILTED DOWNシリーズに使われるナイロンタフタの染色工程。ナイロンは熱を加えることで縮み、染色によってシワが生じやすい素材ですが、「小松マテーレ」では、その光沢を損なうことなく、ツルッとした美しい表情へと仕上げる独自の技術を持っているのです。
「『小松マテーレ』さんは今回のナイロンタフタの染色に限らず、いろんな加工技術を持っていて。それを楽しみながら開発されているような印象がある。そうした発想力と、それをきちんと形にする技術によって、ぼくたちのクリエイティブは支えられているんですよね」
CMYKのバランスで決まる“色”。過去につくった色のレシピを持ちつつも、同じように再現するのは困難なため、染色のテストを何度も行っている。
染色の“色出し”も一筋縄ではいきません。とくに「ARCHETYPE」で採用するブラウンは、色の明るさやトーンのバランスを取るのも大変。さらにブランドが指定した色を表現するためには、素材に合わせた染め方を選定し、その日の気温や湿度によってレシピを繊細にアレンジする必要があるといいます。まるで生き物を扱うようです。
「色出しって毎回苦戦するんです。ぼくらは『もう少し赤みを抑えたい』とか『もう少しブラウンを深くしたい』なんて簡単に言ってしまうんですけど、それを実際に形にするには本当に大変な技術が必要なんですよね。現場を見たからこそ、その凄さを実感しました」