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西本克利連載。羊文学・塩塚モエカと音楽放談。
MONTHLY NISHIMOTO IS THE MOUTH

西本克利連載。羊文学・塩塚モエカと音楽放談。

〈NISHIMOTO IS THE MOUTH〉を主宰する西本克利による連載企画。今回は彼が大ファンだと語る羊文学・塩塚モエカさんがゲスト。新しいアルバム『our hope』の話題はもちろん、羊文学について西本さんが深掘り。音楽という地平線を眺めなら自由に語り合ってもらいました。

  • Photo_Fumihiko Ikemoto
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Edit_Hiroshi Yamamoto
  • Special Thanks_drink & mood mou

ジェームス・ブレイクの音づくりや音数の少なさに惹かれた。

ー 塩塚さんは家にいるときどんな音楽聴くんですか?

塩塚:いろいろ聴きますよ。ポップスとか、ビリー・アイリッシュも聴くし。あとはアンビエントとかも。あんまり詳しくないんですけど、好きなやつをひたすら聴いてますね。

西本:それがいちばんいい聴き方だと思いますよ。ぼくも英語とか読めないから、アーティスト名なんて呼んだらいいかわからないし。だけど曲がいいからレコード買って聴く、みたいな。それくらいでいいかなって。気に入っていれば。

塩塚:最近は ミルトン・ナシメントっていうアーティストの『MINAS』っていうアルバムをよく聴いてますね。1年前にエンジニアのzAkさんに教えてもらって。

西本:どんな感じの作品なんですか?

塩塚:塩塚:なんかちょっと牧歌的な感じのアルバムなんです。ミルトン・ナシメントはビートルズに憧れてて、ミナス地方の音楽とビートルズが混ざったような感じというか。民族的な香りもありつつ、だけどボーナストラックでビートルズのカバーが入ってたりして。90年代にボアダムスがそれを聴いて、影響を受けたっていう話も教えてもらって。久々の衝撃だったというか。スピリチュアルな感覚もあったりして。

西本:むかしの音楽なんですか?

塩塚:1975年のリリースみたいですね。

ー そうした作品を聴いて、羊文学の曲作りに活きたりとか、インスピレーションが得られるんですか?

塩塚:どうなんですかね。私はあんまりロックバンドの曲を聴かなくて。ジェームス・ブレイクを中学生のときに聴いて、1stが出たのがちょうど15歳くらいだったんですよ。あの音の少なさとか、音作りにすごく憧れていて。それがバンド活動に活きているのかわからないですけど。

西本:あのアルバムは超衝撃的でしたよね。ダブステップ系のDJでジェームス・ブレイクの曲をプレイしている人多かったですよ。

塩塚:セカンドくらいからだんだん華やかになっていって。昔のほうがいいってあんまり言いたくないんですけど、あの少なさと独特の暗さにすごく惹かれましたね。

ー 暗い音楽ってなんで惹かれてしまうんですかね。

西本:なんでなんでしょうね。ぼくもアンビエントとかエレクトニカとかにはまって一時期聴いていて。なんか気持ちいですよね。

ー 感情のどこかに触れる部分があるんですかね。

塩塚:なんか、曲から連想する色があって。それが好きだと、この曲いいなってなりますね。フォークトロニカでフアナ・モリーナっていうアルゼンチンのアーティストがいるんですけど、魔法使いっぽい音で、その人も好きなんです。

西本:民族っぽい感じが好きなんですか?

塩塚:うん、好きですね。

西本:ぼくも結構好きで、フィールドレコーディングした民族音楽とか聴いたりしてて。キンキコングっていうすごいかっこいい人がいて。世界各地に自分で足を運んでいろんな部族の音をレコーディングしてリリースしているんですけど。日本も一回来たんですけど、すごいかっこよかったですね。

塩塚:深堀りされていて本当にすごいですね。

西本:曲をつくってバンドやっている人のほうが遥かにすごいですよ。インスタのライブとかもたまに見るんですけど、かっこいいですよね。アコースティックのやつとか。見ながら唄ってましたよ(笑)。MVもめちゃくちゃ見てて、『1999』はもう1000回くらい見ていると思います。

塩塚:本当ですか? めっちゃ見てますね(笑)。ありがとうございます。

西本:だけど「ソーダ水」がいちばん好きです(照)。

塩塚:それがおもしろいんですよ、繊細なハートをお持ちですね(笑)。

西本:「ソーダ水」っていうタイトルなのに、“ソーダ水”という歌詞が1回しか出てこないじゃないですか。そういうドラマチックな感じにめちゃくちゃやられて。

ぼくは「ズッ友」っていうイベントを友達と定期的にやっているんですけど、自分がDJをするときにハードコアとかグラインドコアをかけて、最後にノイズの中から『ソーダ水』が聴こえてくるようにプレイしたら「最後の羊文学、最高でした」ってお客さんに言われて。あのときはすごくよかったですね。今日も家を出るときに聴いてきました(笑)。

塩塚:そんなにお好きなんですね! 本当にうれしい。ありがとうございます。

ー 「ソーダ水」は塩塚さん的にどういう位置づけの曲ですか?

塩塚:『放課後ソーダ日和』っていうドラマがあって、それは仲がいい映画監督が制作したものなんですけど。それの劇伴を作っている最中にできた曲なんです。そのときに、それだけでひと夏が終わったんです。はじめて担当した劇伴だったし、楽しくて。その夏はやたらクリームソーダーを飲んだりしてて。そういう思い出と、作品から得たメッセージを自分なりに解釈してつくったんですよ。

西本:思い出の曲なんですね。

塩塚:そうですね。ギターに全部リバース・ディレイをかけて、シュワシュワ感を出したりとか。そういうので夏の気持ちい感じを表現してますね。

西本:BOYのTommyくんが裏で叫んでるやつもあるじゃないですか。「ドラマ」。あれもすごく好きですね。この前Tommyくんと会ってすこし話したんですよ。彼は「羊文学の作品をうちがいちばん最初に扱った」って自負してて。

塩塚:渋谷のタワレコで試聴するのが私は好きで、最近はあまり行けてないんですけど…。まだ20歳くらいの頃にMitskiっていうアーティストをそこで知って、聴いた作品にやたら叫び声が入ってて、それでかっこいいなと思って『ドラマ』をつくったんです。

西本:最初はドラムの人が叫んでいるのかなって思ったんですけど、Tommyくんだと知って、なんか腑に落ちたというか。

塩塚:叫び声なのかすらもわからないくらい枯れているというか。ギターのディストーションみたいな音ですよね。

バルセロナにMOURNっていうバンドがいて。年齢は私たちと同じくらいのパンクバンドなのかな? Talking Headsがすごく好きみたいなんですけど。

塩塚:あんたの頭はキャンディでできている、みたいな曲があって、そのMVがめっちゃかっこいいんですよ。「ドラマ」はその曲からも影響を受けていて。パンク感があって、Tommyさんのディストーションボイスもすごく効いているし、私の中ではすごく好きな曲ですね。

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nishimotoisthemouth.com
Instagram:@k_nisimoto_

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