いい距離感を保ちながらシーンと向き合っている。
ー FACEさんはいまの活動をはじめてどのくらいになるんですか?

FACE:絵はずっと描いていて、お仕事をいただくようになってから7~8年くらいですかね。インスタグラムで自分の絵をアップするようになってから、徐々にイラストの依頼をいただくことが増えてきて。
ー はじめはイラストレーターとして雑誌などの挿絵を描かれることが多かったと思うんです。だけど、そこから徐々にアーティストとしての活動に力を入れていったように感じます。
FACE:そうですね。ぼくが活動をはじめた頃に長場雄さんや花井祐介さんが活躍されていて、イラストレーターとアーティストの境界線がだんだん曖昧になってきた感覚があるんです。ぼくはそこにうまく乗っかれたんですよ(笑)。

FACE:そうしてクライアントワークがどんどん増えていったんですが、もともとアーティストとしてもっと個人的な作品を描きたいっていうのはあったんです。もちろん、いただいたお仕事には本気で向き合っていたんですけどね。そうゆう想いが歳を重ねるごとに強くなっていって、肩書きも最初はイラストレーターでやっていたんですけど、徐々にアーティストへとシフトしていきました。
ー そのシフトの仕方がすごくスムーズというか、ナチュラルな感じがしますよね。
FACE:本当ですか? ありがとうございます。だけど、それは自分だけの力というよりも、周りの人に支えられているからだと思うんです。かっこいい方々と一緒にコラボレートして得られるものがすごく多いし、ぼくの絵はポップだと思うんですけど、それをかっこよくしてくれる人たちがいてこそだと思ってて。
西本:FACEくんってすごくカルチャーを大事にしているじゃないですか。だからSHINKNOWSUKEくんや、ゴローさんと仲がいいんだと思うし、相互でリスペクトがありますよね。それと、ローカル感もすごくあって。池の上の「ミンナノ」や代々木八幡の「Supply」がハブになって色んな人が集まってて、独特のコミュニティを形成しているというか。
ー コミュニティを大事にしている感じはしますよね。ファッションやアートがきっかけの繋がりではあるんだけど、それ以前に人としてみんな信頼し合いながら切磋琢磨している感じがします。
西本:そうなんですよ。いい距離感を保ちながら日本のファッションシーンやアートシーンと向き合っているなって。海外ではそうゆうコミュニティのあり方って普通なんですよね。それの日本版な感じがして。
FACE:そんなこと言っていただいて…。ありがとうございます(照)。

西本:トレンドとして消費されてしまうクリエイターもたくさんいるじゃないですか。だけど、FACEくんはそうやってリスペクトの心があるからかっこいい作品が描けるんだと思うし、周りにもきちんと評価されているんだと思います。
最近、〈バレンシアガ〉がSMのラバーコスチュームをコレクションの中に取り入れていたんですよ。ようやくメジャーなブランドがそうしたアンダーグラウンドカルチャーに目を向けたなと思って。だけどそれは賛否両論あって、中にはそっとしておいて欲しいっていう人もいるし、取り上げてくれてうれしいっていう人もいて。ぼくもSMは大好きだし、ずっとむかしから追いかけているから、どこか違和感を感じてしまう部分もあるんです。
次のシーズンがどうなるかはまだわからないけど、カルチャーのいいとこ取りだけで終わってしまうのは寂しさがあって。ただただ消費されて終わっちゃうのはイヤだなと。エッセンスを残していくことが大事だと思うし、そうゆうことを考えながらぼくも服をつくってますね。
ー FACEさんに聞きたいんですが、ゴールはないと思うんですが、現状の目標などはありますか?
FACE:美術史に残りたいっていうのはありますね。あとはちゃんとした美術館に作品を所蔵されたいとか。そういう夢はあります。
目の前の目標というと、いまメインでやり取りをさせていただいている「Gallery Target」に所属されているアーティストの先輩方と肩を並べたいっていうのはありますね。

ー アートって評価基準がすごく難しいじゃないですか。人の価値観はそれぞれですし。
FACE:そうなんです。だからこそ常に安心はできないというか。
西本:個人的にFACEくんは並ぶと思いますけどね。
FACE:そう言っていただけるとうれしいんですけど、自分はまだまだだと思っているので…。
西本:FACEくんにしかできない唯一無二のものが描けているじゃないですか。
FACE:それがアーティストとイラストレーターの違いなのかなと思います。
西本:FACEくんの作品って、一瞬でそれだってわかる。オリジナリティがあるから。それがすごいなって思いますよ。


ー もともと平面的な絵を描かれていましたけど、最近は立体感のある作風に変わってきてますよね。
FACE:そうですね。カウズとかの影響もあって、もともとは線がパキッとした作品を描きたかったんですよ。最初は色を塗るのとかもニガテだったんですけど、いろいろ模索しながらスキルを磨いていったんです。それで徐々にできることが増えていって、小さなキャンバスから立体的な絵を描きはじめてちょっと手応えがあったので、いまは大きなキャンバスにチャレンジしていますね。
西本:すごい進化してますよね。色使いもFACEくんらしいなって思うし。
ー NFTは興味あるんですか?
FACE:なくはないですけど、やるかどうかは別ですね。NFTで表現したいことがぼくの中でまだ見つかっていないので。せっかくアナログでこういう形に辿り着いたので、いきなりデジタルにはいけないなと。そこの整理と、あとはどういう人と組んでやるかが見えたら挑戦してみたいなとは思いますけど。
西本:なるほど。FACEくんらしくていいですね。
