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蔡俊行フイナム発行人ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

代官山通信

蔡俊行
フイナム発行人

ファッション関係のマーケティング全般に関する仕事が主業務。WEBマガジン「フイナム」の発行主。

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ラグジュアリー

2007.07.03

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 セレブとかラグジュアリーとか。そんな言葉が流行中だ。というか良く目にする。主に雑誌。ほぼこの2ワードの言葉が出ないグラビア誌はありえない。そんな状況だ。
そんなに世の中、格差があるのか。昔も格差は確かに存在していたような。それがどうしてこんなに大げさに伝えられるのだろうか。まあいいが。
ぼく自身はセレブでもなんでもないのだが、ラグジュアリーな経験は仕事の役得として結構ある。
たとえばタイアップの海外撮影の飛行機の席がファーストクラスだったり、ホテルがファイブスターだったり。若いころはプレスカードなども出版社から発行されていたので、通常の人が入れないさまざまなゾーンでさえ入場可能だった。ドラえもんのツールのように。
バブルの時代が良かったとも言えるが、それを望む人から見ると羨ましく思われるだろう。本人にとっては豚に真珠な出来事であったが。
そういえば某スポーツメーカーの仕事でアメリカに渡ったときは、バスケットのドリームチームの練習場に秘密で連れて行かれた。練習後、それらNBAのスーパースターたちと夕食を共にした。しかしぼく自身バスケットにまったく興味がなく、知っている選手はほとんどいないのでただの大きなアフリカ系アメリカ人たちと過ごしたくらいの印象だ。本当にもったいない。
それでもまあ年も取ったし、それなりに社会的にも信用というか貫禄が出てきた。
その進化(?)の途中でまあいろんな人との交流も生まれ、そこに付き合いも生じる。その流れで高島屋の外商とのお付き合いも始まった。
基本的にデパートで買い物をする機会というのは多くない。必要なもののほとんどはそれぞれの専門店で間に合わせる。家電製品は量販店の方が種類も多いし、価格も安い。服に至ってはデパートの品揃えは論外(失礼)。基本的に買い物は本か食品くらいしかないのである。
なので外商を通す買い物というものは、お中元やお歳暮を含めて年に数回しかない。玉川高島屋の6階には外商サロンがあるのだが、いつもただの駐車券をもらいにいくだけだった。
ところがおとといの日曜日、どういう気の吹き回しか突然買い物先に玉川高島屋を選んだ。ほんと細かいものばかりなのだが、それらを一気に買おうとするならデパートを利用するのが手っ取り早いということに気づいたのだ。
店内はセールで混んでいてレジにも結構人が並んでいるのだが、こちらはサインひとつで次々に決済ができる。しかも商品を包んでもらう時間を待たずにあちこちに移動できる。買ったものは次々に店員さんが外商サロンへ届けてくれるからだ。つまりどんなに買い物をしてもずっと手ぶらでいられる。これは楽ちんだ。
ひと通り買い物をすませてサロンへ。しかしここからが問題であった。あまりにもこちらの格好のみすぼらしさにサロンにいる係員がものすごく慇懃に、ここはあなたたちのような種類の人間の来る場所ではないのですという光線を浴びせるのである。
確かに小汚いジーンズに小汚いビルケンのサンダルだ。髪もボサボサだし、顔色も悪い。
しかし担当者の名前をコールした途端、彼らの態度が180度変わるのである。冷たいお茶は出してくれるし、問い合わせにも機敏に反応してくれる。まるで本宮ひろしの漫画の世界である。おれは安田一平か。
あまりの豹変というかこの対応に水戸黄門でもないのにと苦笑しつつ荷物を受け取って家に戻った。
まあこれも一種のラグジュアリーな経験だ。なにか自分がものすごい上顧客になったように錯覚を覚える。何度もいうが買い物経験で得たステータスではない。ツテだけである。しかも買ったものは、またビルケンのサンダルにセールのTシャツとかそんなもんばかり。
カウンターの隣に座っていた初老の婦人はクルーザーのカタログのようなものを見ていたな。売ってんの、それ?真のセレブのラグジュアリーな暮らしがどんなものか想像できない。

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