第二講
栗原道彦

‘70s SYNERGY WORKS
栗原:ぼくはまず、北カルフォルニアのオークランドで1971年に設立された〈シナジーワークス〉のパイルジャケットを見てもらおうかと。
藤原:これは珍しいですね。初めて見たかもしれない。
栗原:そうそう。ゴアテックスのマウンテンパーカなら何度か見かけたことがあると思うんだけど、このパイルはぼくも実物は初めてで。以前、まだブランド自体をよく知らない頃にネットで検索したら『モノシリ沼』(1970年代から’80年代にかけてのハイテクアウトドアアパレル、ギア、ブランドなどにフォーカスした識者の個人ブログ)ってブログがヒットして。ぼくらみたいな仕事をしている人にはわりと知られたブログだと思うんだけど。そのブログをきっかけに深掘りして、さらに興味を持っていったと。


阿部:なるほどね。ブランドの存在自体は知ってはいたけど、確かもう消滅しているよね?
栗原:はい。’80年代には消滅していますね。
阿部:確かにマウンテンパーカとかも他のブランドと違って一風変わったディテールワークって印象が強いかも。

今野:この襟のデザインも他では見たことのない仕様ですよね。顎まで覆える長さに設定されていたり。

栗原:そうなんですよ。マウンテンパーカと同様にアームの下に大口径のベンチレーションを装備していたり、当時からトータルレイヤリングもしっかり考えた製品だったみたいで、同素材のパイルパンツも存在するみたいですね。
阿部:へえー。この時代のいまとなっては評価の高い消滅ブランド、たとえば〈アーリーウィンタース〉とか〈アルパインデザイン〉なんかも総じてディテールワークが独創的だよね。
栗原:そうですね。〈シナジーワークス〉もマスクみたいなフェルト製フェイスガードのオプションパーツがあったり、実用的かつユニークな製品が多いので、アウトドアアパレルマニアの間でも人気を集めているみたいです。

阿部:海外でも評価されてるの?
栗原:いや、この辺のある意味マニアックなものに関しては断然日本の中古市場の方が強いと思いますね。海外だと行って〈パタゴニア〉止まりというか。
今野:栗くんはこれ着てるの?
栗原:最近は自宅から事務所までの距離、徒歩数分を行き来するだけなので、そもそも冬物のインナーをあまり着てないですね(笑)。