第三講
藤原裕

1940’s GWG COTTON TWILL WORK TROUSERS、1950’s BIG MAC COTTON WORK TROUSERS
藤原:まずはチノを。
阿部:裕君がチノを穿いてるイメージって、あまりないよね。
藤原:やっぱりデニムパンツを穿いてることが多いですから。店に立つ時は、必ずどこかにデニムを取り入れるって決めてて、デニムのセットアップとかも結構してたんですが、ちょっと疲れてきちゃいまして(笑)。
一同:(笑)。
阿部:このビジネスデニムめ(笑)。

藤原:もちろん好きですよ(笑)。ただ毎日のようにデニムを穿いていたので、チノがとても新鮮なんです。特にカーキはジージャンとも合わせやすいので、最近よく穿いてます。
今野:この〈ジーダブリュージー〉、いいね。
藤原:あまりないですよね。ワークならではのディテールも面白いです。
栗原:チノっていうと軍もののイメージが強いからまだ玉数があるように感じるけど、ワークブランドのチノって滅多に出ないよね。ワークブランドのネームが入ったチノなんて、一回の買い付けで1本見つかるか見つからないかって感じだから、本当に珍しいと思う。
藤原:出ないよね。

今野:「DRILLER’S DRILL」ていう織りネームもかっこいいよね。40年代かな?
藤原:このタグなので40年代だと思います。
栗原:サスペンダーボタンもついてるし、そのくらいかもね。
今野:この年代のシルエットはやっぱり太めだよね。
藤原:そうですね、基本的にズドーンです。
今野:今日穿いてるシルエットはテーパードがかかってて、形いいね。
藤原:〈リー〉の「LeeSURES(リージャース)」っていうラインなんですが、細身なのでよく穿いてます。ちなみにこんなタグです。
阿部:見せてくれるんだ(笑)。

阿部:こっちの〈ビッグマック〉もかっこいいね。
藤原:いいですよね。
今野:タグの場所が面白い。

藤原:後ろに付くことがほとんどですよね。
阿部:右側のループが2つ並んだ仕様も面白い。
藤原:〈ジーダブリュージー〉も〈ビッグマック〉もこの仕様なんですが、ぼくの好きなディテールです。

阿部:これってどういう意味があるのかな?
栗原:もしかしたら懐中時計の名残りかもしれません。ちょうどウォッチポケット(コインポケット)の上についてますし。
阿部:あー、なるほど。あとセンターループの仕様も変わってるね。
今野:40年代以前に多い仕様でムービングって言われてます。よくベルトを使ってると真ん中の辺りが凹むじゃないですか。このムービングだと、うまく逃げてくれるんですよね。

藤原:なるほど!
今野:そのためのディテールなのかは断言できないんだけど、結果としてそうなるんだよね。
阿部:いやぁ、奥が深いね。ところで、最近軍チノって高くなっているイメージがあるんだけど。
栗原:軍パン全般ですね。
阿部:韻を踏んでましたね(笑)。
栗原:わざとじゃないですよ(笑)。昨今人気のフランス軍M47やM52の影響で、米軍ものも全般が高くなってきたような気もします。
阿部:そういえば菅田将暉さんがスウェーデン軍のパンツをテレビで紹介したらすごいことになったんでしょ。
栗原:M59ですね。その番組の後、メルカリに出ていたM59がすべてソールドアウトになったらしいです(笑)。
今野:すごいね…。

藤原:うちの店にも軍パンのコーナーがありますけど、入荷日から1ヶ月経つとスカスカになってます。クリ君のお店はどう?
栗原:うちも軍パンは力を入れて集めてるけど、やっぱりお店に出した分だけ売れてるね。でも60年代くらいの綿100のパンツが1万円前後で買えるって普通に安いですよね。
阿部:よく考えると60年代ってもう50年近く前だもんね。
今野:そう考えるとすごいですよね。
栗原:それこそぼくらが古着を買い始めた90年代って、自分たちが生まれる前、70年代以前のものを買っていたじゃないですか。だから、いまの若い子からすると90年代のものがそれと同じような感覚なんでしょうね。
阿部:確かにそうだよね。若い子からしたら90年代もヴィンテージってことだね。